接着剤の微量塗布技術と木質マイクロプライ

接着剤の微量塗布技術

ほとんどの木質材料は「木質+接着剤」で構成されていますが,この材料特性を発現させるために必要な最低限の接着剤量を詳細に検討した例はほとんどありませんでした.我々はこれに着目し,種々の微量塗布装置(図1)を用いた種々の検討から,接着剤量(単位面積あたりに塗る接着剤の重量)が従来の合板や集成材の製造条件と比較して1/10〜1/20であっても十分に接着可能であることを見いだしました
図1.インクジェット法を応用した接着剤微量塗布装置

木質マイクロプライ - 軽量性と力学特性に優れた新しい概念の木質系新素材 -

木質マイクロプライは,従来の接着技術では実現が難しかった厚さが極めて薄い単板(ツキ板など)に,上述した微量塗布技術を適用することで多層積層した薄物材料です.この材料の最大の特徴は,木質材料の持つ経済性や材料合理性(軽量であること,高い力学・寸法安定性,加工性)を損なうことなく,従来の木質材料には無かった薄さを実現していることです(図2)
図2.原料となる薄単板(ツキ板,左)と木質マイクロプライ(右)
図3.各種薄板材料と密度
木質マイクロプライを用いれば,樹脂板や厚紙と同様の薄さの材料をより低密度で作ることができます(図3).原料となる単板が薄いため,接着・成形時の曲面加工や,特殊な性能を付与する化学処理などがより容易になると考えられます.これらから,これまでに木材や木質材料が用いられてこなかった分野への用途開拓が期待されます.

木質材料の新しい利用分野開拓

現在,木質材料の軽量かつ高い力学性能を持つという特徴と,自由で精細な成型性を持つ汎用熱可塑性樹脂を適材適所で複合化することで,相互の材料が持つ利点を活用しつつ欠点を補った新しい形の木質/プラスチック複合材料の実現に向けた研究に取り組んでいます(図4).この技術は、木質材料の新しい利用展開を図るものであると同時に,樹脂成形材料の新機能開拓にも繋がるものと考えています
図4.木質マイクロプライと樹脂の複合成型物