CLT利用の新展開〜日本初!橋の床にCLT!〜
日本全国の橋梁が高齢化 “CLTだからできる”橋梁補修法の新提案!
国内に73万橋あるといわれる橋梁(橋長2m以上)のうち,架橋後50年以上の橋梁が,2016年で全体の20%(15万橋)を占め,10年後には44%に急増すると試算されています.それら橋梁の維持管理には大きな課題があります.
橋梁総数の約4割を占める鋼橋は、その劣化要因の6割がコンクリート(RC)床版の損傷(図1)であり、古い橋梁を現行基準(耐荷重)に適合して補修すると、RC床版が厚く(=重く)なり、主桁や橋台の補強が必要となるケースが出てきます。
木高研は「軽く強く、施工性に優れる」CLTの特長を活かせる用途として、橋の床版への利用に着目しました。CLT床版は,①軽い→主構造の負担軽減,運搬・架設が楽,②強い→耐疲労性に優れ,塩害に強い,③施工性に優れる→工場生産した大判の床版が利用可能,等のメリットが挙げられます.これまでの研究でCLTの基本強度や繰り返し荷重への強さを試験で実証し(図2),実用化に向けた取り組みを進めています
ラッピングによるCLT床版の高耐久化技術の開発
木材であるCLTは,コンクリート橋・鋼橋で問題となる塩害や中性化,凍害とは無縁ですが,生物劣化(腐朽菌・シロアリ)への対策を十分にする必要があります.木材の主な高耐久化技術に防腐処理がありますが,寸法の大きいCLT製品や大量のラミナへの薬剤加圧注入は,現状の技術では実用化が難しいと思われます.
木高研は「内容物の物理的保護」で一般的な手段の“ラッピング”に着目し(図3)、CLT表面へのFRPシートの貼付や塗膜系材料による塗工などのラッピング技術を新たに考案しました(図4).乾湿繰り返し試験(20℃ 40%RH⇔20℃ 90%RH)の結果、防湿(防水)効果を期待できることがわかってきました(図5)
秋田で実証試験開始!〜CLT床版はじめました〜
防水加工CLT床版を用いた実証試験を,秋田県仙北市の県有林内の2等林道橋(橋長7m,有効幅員3.5m,設計荷重:14t)と秋田県大仙市の農道橋(橋長10m,有効幅員3m,設計荷重:4t)ではじめました(図6,図7)
(報道)「床版更新の新たな侯補「CLT」」日経コンストラクション ( 2018/05/14,佐々木貴信 )
(報道)「広がる可能性!国内初のCLTの橋」.秋田県広報番組 あきたびじょんNEXT ( 2017/06/01,佐々木貴信 )
(報道)「CLT橋の床材に 木高研 検証へ国内初設置」 秋田魁新報 ( 2017/03/17,佐々木貴信 )
(報道)「橋床板にCLT 耐久性を検証」 秋田魁新報 ( 2017/02/18,佐々木貴信 )
(報道)「橋梁用CLT床板の可能性探る 土木学会」 日刊木材新聞 ( 2016/08/19,佐々木貴信 )
(報道)「CLT、橋の改修に 軽く運搬・仮設が容易」日本経済新聞 ( 2018.11.17,佐々木貴信 )
(報道)「軽い直交集成板「CLT」床版更新に」橋梁通信 ( 2019/01/01,佐々木貴信 )